「資産運用を始めましょう」と言われても、何から手をつけてよいか分からない方も多いのではないでしょうか。 そこで資産運用の準備運動として、すぐにでもできることをご紹介します。そして、資産運用の考え方の基本になる「資金管理方法」をご紹介します。資産は、「安全性」、「流動性(=換金性)」、「収益性」の3つのバランスを考える必要がありますが、そのポイントについても解説します。その上で、これら3つのポイントに適合するような金融商品を選ぶわけですが、「よい金融商品とは何か」を見分けるポイントもご紹介します。
資産運用の準備運動
資産運用を始めるにあたって、まず、ご自分の資産の現状をしっかり把握することが第一歩です。つまり、銀行に預けているお金、郵便貯金にしているお金、生命保険、株式や債券などの有価証券(これは、時価で評価してください)などを、一度洗い出してみてください。計画を立てる前に、まず手持ちの材料を調べるのです。その際に、借入金とローンの状態(金利や返済期間など)を確認するのも大切です。
次に、洗い出した資産に「色」を付けます。これは、資産を使用時期や使用目的に合わせて分類することです。
【資金の色分けのイメージ】
使用時期 |
1年未満 |
1〜2年 |
2〜5年 |
5年以上 |
色分け |
生活費 |
余裕資金 |
予定資金 |
長期資金 |
資金の性質 |
生活費、必ず使うことが分かっている支出 |
失業などイザという時のためのお金 |
住宅購入、学費、車の買い替え等 |
老後資金、子供の学費など |
流動性 |
◎ |
◎ |
△ |
× |
安全性 |
◎ |
◎ |
○ |
○ |
収益性 |
× |
△ |
△ |
◎ |
資産運用の3つのポイント
資金管理のポイントは、流動性を軸にすることです。何年後に使う予定の資金なのかを明確にし、その期間に対応させて「収益性」と「安全性」のバランスを取るのが効率的だからです。色分けした資産は、運用期間によって、この3つのポイントのバランスの取り方を示しています。例えば、1〜2年以内に使う予定のある資金を株式投資に回すことはできません。短期的には価格が下落して元本を割ってしまうリスクが高いです。ところが反対に、5年も10年も先の老後資金などを、「安全だから」といって超低金利の預貯金に寝かせておくことはできません。その間に物価が上昇してしまって、いざ使う時には、金額は同じでも実質的な価値が減っている可能性があるからです。ですから、5年以上先に使うお金は、収益性を重視して運用しなくてはなりません。
このように、すべてのお金を同一商品にせず、「資金の性質にあわせた商品選定」をすること、これが今後必要な資金管理の手法なのです。
流動性とは?
流動性は、いつでも買えるか、いつでも売れるかという意味での売買のしやすさです。預金やMMFなどは流動性の高いものの代表で、逆に不動産などは流動性が極めて低いといえます。収益性と安全性が満足のいくものでも、買いたい時に買えて、売りたい時に売れないと、投資による収益が絵に描いた餅になってしまいます。売買の際に制約があるかどうかは、きちんと押えておきたいポイントです。
収益性とは?
収益性とは、投下した金額に対するリターンのことです。その商品の過去の実績から、将来の期待される収益に関する情報をある程度知ることができます。過去のリターンを調べるのは、リターンが得られた理由を調べるためです。たまたま相場で追い風が吹いていたか、商品の仕組みが優れていたのか等、その理由を知れば、将来のリターンに対する期待の程度を推定することができるからです。(ただし、「去年1年で2倍になった」などと、過去の一時期の結果だけを単純に見て収益性を判断するのは危険です。)
現預金、債券、株式の中で、過去どれぐらい収益に違いがあるか、次のグラフをみていただけると分かると思います。経済が成長する限り、すべての資産が右肩上がりですが、中でも株式の収益性が一番高いことがわかります。特に、インフレ率(物価上昇率)と比較すると、収益力のある資産に投資することが長期的にはいかに大切かをご理解いただけると思います。

出所: Wiesenberger(R)
安全性とは?
安全性とは、投下した資金が損なわれないことです。「元本が割れないこと」や「購入したものが突然紙切れになってしまわないこと」などが安全性の具体的なイメージです。この安全性は、「信用リスク」と「市場リスク」という2つのリスクに分けて調べるべきです。
(1)信用リスク
信用リスクとは、要するに会社等が倒産するリスクのことです。例えば、ある会社の債券を持っているのに、その会社が倒産したら、その債券は、利息はおろか、元本も返ってこないと思ったほうがよいでしょう。このような事態を避けるために、投資対象の信用リスクを調べておくのはとても大切です。
また、信用リスクをチェックすると同時に、取引している銀行や証券会社が万一倒産した場合に、購入している商品がどうなるかを、チェックしておくことも大切です。ペイオフ解禁で、銀行が破綻すると、預金は「元本1,000万円とその利子」までが保護されますが、投資信託の場合は、販売会社・運用会社・信託銀行のうちどこが破綻しても投資金額は売却することにより時価で全額が引き出し可能となります。
(2)市場リスク(価格変動リスク)
商品が、経済や市場環境の変化でどの程度価格が変動するかというリスクです。例えば、預金の場合は、金利の増減はあるものの、ほとんどの場合預けたお金が大幅に増えたり減ったりすることはありません。これは「価格変動リスク」が小さいということです。反対に、株式の場合は、価格が何倍にも増えたり減ったりするので「価格変動リスク」が高いといえます。
リスクとリターンは表裏一体
リスクとリターンは表裏一体の関係です。大きなリターンを望むならば、大きなリスクを覚悟しなければなりません。ローリスク(ノーリスク)でハイリターンの商品はないと考えたほうがよいでしょう。収益性・安全性・流動性の3つのバランスを考えるのは、投資期間によって色分けした資産ごとに、どれだけリスクとリターンを配分するかを決定することが大切だからです。
